エアロノーティカルモービル Aeronanutical Mobile(小型機飛行中におけるアマチュア無線運用)の考察2016年01月25日 12:43

過日。
某私大法学部2年在学中の長男:
「おとーさん、学年末試験の刑法と憲法の単位があやうい・・・教科書読んだけどサッパリワカラン・・・もうダメかも・・・遊びすぎた・・・」
と、深くうなだれた。
小職:「バカモン。そんならオレが特訓してやる」

・・・という親子の会話があり、金土日と3連チャンで朝から晩まで、長男相手に憲法/刑法の特別レクチャーをした。口角泡を飛ばしの喋りっぱなしだったので、喉がガラガラである。

 憲法については立法府と裁判所の違憲立法審査権との関係、司法消極/積極主義、合憲性判定基準、なかんずく二重の基準論、(政治的)表現の自由の優越的地位、罪刑法定主義、漠然性故に無効の法理、LRA基準、信教の自由、政教分離原則、目的効果基準 etcetc・・・

 刑法に関しては構成要件論、実行行為、因果関係、構成要件的故意、錯誤論、違法性阻却事由、責任論、原因において自由な行為etcetc。

てなことで、こんな設問を作ってみました。「模範解答」もドーゾ。

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(設問)
「ある無線オタク(2アマ保有、当然コールサイン/局免持ち)にして、陸単・動滑・上滑持ちのA氏は、ある日、自家用ポンコツモグラ「25B」を運航し、上空からアマチュア無線運用(いわゆる「エアロノーティカルモービル aeronautical mobile」)をやってみようと考え、国交省の関連部署にその合法性を問い合わせたところ、当該お役人から下記規定を理由に、「小型自家用機といえども例外ではなく、耐空検査時にそのアマチュア無線用トランシーバを機体に搭載した状態で耐空検査を取得したのでなければ、上空飛行中におけるアマチュア無線用トランシーバの使用は一律に禁止です」と言われた。そこでA氏はやむなく、「応答無え飛行場」における飛行場祭りのイベントにおいて、上空からアマチュア無線の運用を行うデモ運用を行うことを諦め、これを中止した。
  なお当該デモ運用は、過日の東北大震災において、通常の電話、メールなどが通信不能に陥った教訓に基づき、上空から被災状況を確認し、これをアマチュア無線を使用して地上に伝達する非常・救難通信の訓練を兼ねていた。
 この場合における憲法上、刑法上の問題点を指摘し、上記「エアロノーティカルモービル(aeronautical mobile」)運用」の合法/違法性について論ぜよ。」

(参 考)
 東北大震災における通常の通信手段の途絶について

アマチュア無線による非常通信マニュアルhttp://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/emergency-communication-manual.pdf

(関連条文)
航空法施行規則 
第 164 条の 15 (安全阻害行為等の禁止)
国土交通省令で定める安全阻害行為等
・・・ 航空機の運航の安全に支障を及ぼすおそれがある携帯電話その他の電子機器であつて国土交通大臣が告示で定めるものを正当な理由なく作動させる行為・・・は禁止する。

(告示)
第1条 航空法施行規則(以下「規則」という。)第164条の15第4号の告示で定めるものは・・・右欄に掲げる物件とする。
三  トランシーバー
その他 略

(参考)

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(模範解答)

1 A氏は2アマを保有しているのだから、電波法の定める国家資格たる無線従事者である。また電波法における無線局免許とコールサインを保有しており、総務省・関東総合通信局長発行の移動局免許状には「陸上、海上、上空」との記載があるのだから、一般論としてA氏による「上空」におけるアマチュア無線局運用は許容されるものと言える。

2 しかしながら、上記の航空法、規則、告示では、上空での航空機内におけるアマチュア無線トランシーバの使用を禁止する旨を規定している。

3 A氏は、無線従事者にして局免持ちなのであるから、上空での無線運用はA氏の憲法上の権利と言え(幸福追求権 憲法13条)、これを少なくとも電波法は肯定している。他方、航空機の運航に際してその安全を維持することは、公共の福祉上、当然の要請である。
 この両者の調整を図るのが、上記の「正当な理由なくトランシーバ等を作動させる行為を禁止する」という規定である。
 法文は「正当な理由なく」と規定しているのであるから、これを反対解釈すれば、「正当な理由」がある場合には、航空機の運行中においてアマチュア無線用トランシーバの使用が許容される場合があることを当然に認める趣旨であり、そのことは上記法文上から明らかである。

4 しかるに、そのような「正当な理由」を一切顧慮せず、「一律に禁止」としてA氏に通告した国交省お役人の設問上記「有権解釈の通知」は、明らかにA氏の幸福追求権を否定するものであって、是認されない。
 国民の権利を制限できるのは、狭義の法律、すなわち「主権者たる(憲法前文、1条)により選挙された(同43条)による国会(41条、最高機関にして唯一の立法機関)により制定された「法律」だけであって、国交省のお役人にすぎないレベルの「解釈」によって、基本的人権を制限することはできない。これは憲法の規定する罪刑法定主義(憲法31条)による当然の帰結である(上記航空法には罰則の規定がある)。

5 そこで本件では、小型自家用機運航における上空でのアマチュア無線運用が、どのような場合に、上記「正当な理由」要件を充足し、合法な行為として許容されるか、という問題に帰着する。 
 この問題を考えるには、上記航空法の規定「航空機の運行中、搭乗者はトランシーバを使用してはならない」という規制の立法趣旨を検討しなければならない。
 この点、同規定の立法趣旨は、端的に、航空機に搭載される電子機器類の「EMCないしイミュニティ」の問題に立脚・由来するものであることは明らかである。

すなわち、例えば、その昔「旅客機YS-11の運行中に、上空で「Nikon FM-2」のシャッターをカシャリと押すこと」は何の問題もなかった。これはYS-11機には、電子デバイス類の計器類が無線(航法)装置を除き搭載されておらず、かつ機械式カメラであるNikon FM-2が、全く電磁波を発生させないからである。
 ところが近年ではデジタル技術が著しく進歩し、航空機に多数の電子デバイスが搭載されるようになり、他方、搭乗者たる一般市民においてもデジカメ、スマホ、ノートPCなど、高周波/電磁波を発生させる機器類が普及するに伴い、乗客の持ち込む電子デバイスが航空機の電子デバイスに深刻な影響を与える事態が生じた。
 このように、「航空機に搭載される電子機器類の『EMCないしイミュニティ』」に鑑みて規制するのが上記航空法関連規制であり、その点が上記規制(立法趣旨)の核心である。このことは、上記航空法関連規制において、「(航空機搭載の電子デバイスの「耐性」(イミュニティ)」という用語が頻出していることが明らかである。

6 以上から、自家用小型航空機の運航に際して上空でアマチュア無線トランシーバをどのような条件下で使用することが正当事由として許容されうるか、についての回答が導かれる。要するにそのトランシーバ使用が、航空機の運航の安全に全く影響がないよう配慮して使用する場合は、正当事由あり、としてその運用が許容されるのである。以下、さらに詳細に検討する。

① 機体による制約
「エアロノーティカルモービル」に使用する当該小型自家用機航空機が、電子デバイスによる計器等(EFISその他グラスコクピットたる液晶表示方式のAI/DGや高度計、速度計、VSI、ガーミンG1000/GPS、他燃料計、CHT、油温/油圧計等)を装備し(例えばシーラスSR20)、これに依拠して運航するものであるときは、トランシーバ使用によるイミュニティ検証がなされていない以上、障害が発生する可能性があるから、機内におけるアマチュア無線用トランシーバの使用は許容されない(受信も不可。近時のTRXは全てスーパーヘテロダイン方式であり、VFOないし局発からの発振があるから。以下同じ)。

② 運航形態による制約
その航空機がIFRで運航されている場合には、デパーチャー/アプローチコントロールやタワーなどから頻繁に高度、ヘディングなどの指示があり、この場合に機内でアマチュア無線用トランシーバを使用することは、これら航空無線通信に影響する可能性があるから、許容されない。 

③ エリアによる制約
当該航空機が、PCA(特管区)、デパーチャー/アプローチコントールエリア、TCAエリア、管制圏(クラスD)、訓練空域、自衛隊所轄エリア及びその近辺を飛行している場合には、これらのエリアを統括する管制機関等との通信設定ないし航空無線交信に対して障害を与える可能性があるから、アマチュア無線用トランシーバの使用は許容されない。

④ 航法による制約
当該航空機がVFRで運航していたとしても、VOR、DME、ADFなどの無線援助施設と機体側の受信装置を利用して飛行している場合には、それらの機体搭載無線式航法装置の正常な動作を阻害する可能性があるから、アマチュア無線用トランシーバの使用は許容されない。

⑤ 場外離着陸場周辺でのフライトにおける制約
場外離着陸場周辺のノープラン9Km圏内は、一般に小型航空機が少なからず運航しており、場外離着陸場F/Sからのトラフィック情報等を知らせる無線交信の障害となる可能性があるから、アマチュア無線用トランシーバの使用は許容されない。

以上から、逆に「運行中の小型航空機からアマチュア無線用トランシーバを使用すること」が許容される場合が抽出される。
① 電子デバイスの航空計器等を使用していない比較的旧式の計器類を備える小型機で、
(端的にはサクション系/ジャイロという機械式AI/DGなどを装備し、高度計、バリオ/VSI、速度計等についてはピトー管及び静圧動圧により作動する機械式計器、燃料計、CHT、油温/油圧計等も機械式ないしセンサー直結のものが装備された機体)

② VFR(有視界飛行)によりフライト中であり、

③ PCA(特別管制区)や管制圏(クラスD)、進入管制区、訓練空域、自衛隊管轄空域、TCA、場外離着陸場の9km圏等の各エリアの外側を航行していて、これらを管轄する管制各機関等と通信設定をしておらず、また当面その必要もない状況下にあり、

④当該小型機がVOR、ADF、DMEといった無線航法援助装置を使用せず地文航法(グランドリファレンス)で航行しており、

⑤使用するアマチュア無線トランシーバが技術基準適合証明を受けたもので、かつ当該航空機搭載の義務無線機と同等かそれ以下の出力であること。

・・・という諸条件を充たし、かつ運航責任者である機長の許諾があれば、当該アマチュア無線用トランシーバの使用は、航空機の運航の安全に何ら障害となるものではないから、「正当事由」を充足するものとして、その使用が許容されるものといえる。

7 「自家用小型機からアマチュア無線用トランシーバ運用をする権利」(以下本件権利)の性質と、適用されるべき合憲性判定基準について

①憲法上、本件権利は条文上は明定されていない。したがって上記権利は、憲法13条の規定する幸福追求権の一派生類型の基本的権利として把握するのが相当である(新しい人権)。
 この権利は、もっぱら個人の趣味趣向に関するものではあるが、アマチュア無線という技術的側面を有し、電子工学・無線工学に関する知的好奇心追及に関するものであって、かつ「他者とコミュニケーションをとりたい」という人類固有の本質的欲求に由来する権利であるから、個人の尊厳に密接に関わる権利として、精神的自由権に準ずる配慮をする必要がある。
 したがって精神的自由/経済的自由による2重の基準論(ダブルスタンダード)ではその上位に該当するから、経済的自由に適用される緩やかな合憲性判定基準(明白性の原則、合理性の基準など)を用いるべきではない。
② 他方、この権利が精神的自由権に属するものとしても、政治的表現の自由ほどの特別の優位性は認められない。この権利は、いわゆる思想の自由市場形成とは無関係であって、その意味では民主的契機を有するとは言えない。
③ 以上の考察から、本件権利は、精神的自由に準じるものとしつつも、ある程度緩やかな判定基準により判定すべきものと考える。
 したがってまず、本件権利を規制した設問の航空法関連規制は、「正当事由」という漠然・抽象的な文言を用いて規制をするものであるが、これをもって「漠然性故に無効」の法理を適用して、上記規制の法文自体を「文面上無効」とすることはできない。
④結局、上述のとおり本件権利の精神的自由たる契機に鑑みると、厳格な審査基準を前提としつつ、ある程度緩和された基準によるアプローチが相当であるから、「過度に広範故に無効の法理」、ないしは「LRAの基準(Less Restrictive Alternative,より制限的でない他の選びうる手段の存在の基準)」を適用すべき権利であると考える。
⑤ あてはめ
以上のように、一定の諸条件を充たせば「小型機運行中におけるアマチュア無線用トランシーバの使用」は許容されるものであり、法規自体も「正当事由」がある場合を文面上、当然に想定している。
  また設問及び参考にもあるとおり、過日の東北大震災において情報インフラが甚大な被害を受け、ネット経由の通常の通信手段が通信不能に陥ったこと、これによりネット上のリソースを使用しない通信手段であるアマチュア無線が非常時の通信手段として脚光を浴びていること、またその訓練も全国各地で行われているという実情がある。
  しかるに国交省は、上記のように、当該規制の立法趣旨を精密に検討した上で、小型自家用機においては例外的に多様な「正当事由」の可能性を検討するべきであるのに、立法趣旨の検討も全く行わず、設問のように極めて安易に「正当事由=当該アマチュア無線用トランシーバを機体に搭載した状態で耐空検査に合格した場合だけ」というふうに「勝手な解釈によって」限定し、「それ以外は一律に禁止」すると通知したのであるから著しく失当である。
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ここをもうちょっと詰めると、正当事由=耐空検査パス、とする根拠がまったく不明。
 耐空検査の実情からして、たかだか5W程度のアマチュア無線用トランシーバをいちいち動作させて(しかも使用する全モード/全バンド)、機体側の機械式計器類の動作確認をするなどということは実体にあわず極めて不合理・・・陸単機の場合、こんな作業に航空局の担当者がつきあってくれるはずもないので、「事実上の一律禁止」になるし。仮につきあってくれるとしても、耐空検査を担当する整備会社による事前準備が必要になり、「事実上不可能」というくらいの費用がかかる。
 動滑機であれば耐空検査員による耐空検査なので可能性はあるが、我が「25B」で言えば、トランシーバからSSB/FMの5W送信してマグコン/高度計/バリオ/速度計等に影響があるか、を検証する作業になるけど、そんなもん常識で考えて影響あるわけねーだろ、ということ。
 万一それで影響あるなら、合法的に積んでる義務無線機の「5W/AMのVHFベッカーラジオ」もダメでしょ、ということ。
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  国交省としては、少なくとも、「小型機/自家用機の場合は例外もありますのでご相談ください」等の文言を記載したPDF文書などをそのHPに掲載して「正当事由」を個別的に対応することが十分に可能であった。
 以上のとおりであるから、国交省担当者が設問のようにA氏に対し「耐空検査合格以外一律禁止」を伝えたことは、「過度に広範な規制」に他ならず、また「より制限的でない他の選びうる手段」(上述のとおり「自家用小型機の場合はご相談ください」等の文言の掲示するなどして正当事由を個別に検討すること)が可能であったのに、それをしなかったという点で違憲、違法となる。
8 以上から、A氏は、国交省の不当・不法な有権解釈の通知により、「応答無え飛行場」における飛行場祭りにおける「小型機からのアマチュア無線用運用」イベントの中止を強要されたものであり、これは当該公権力の行使により、基本的人権(憲法13条 幸福追求権)の侵害を受けて精神的損害を被ったものであるから、国家賠償法に基づき、国家に対して損害賠償請求が可能である。
 当該国交省による人権侵害は、上述のとおりA氏の「自家用小型機運航中に、上空から電波を送信したらどのように高周波は伝播するのか」という電子工学・無線工学に関する研究ないし知的好奇心追及行為を阻害するものであって、かつ「他者とコミュニケーションをとりたい」という人間固有の本質的欲求を制限する規制であるから、極めて由々しき規制と言わざるを得ない。
 よってA氏は少なくとも「月刊CQハムラジオ誌 本年1月号(特別付録のハム手帳付き)」の代金である898円(税別)相当の精神的損害を被ったと言うべきであり、同額を上限として国家に対し損害賠償の請求をすることができる。

                             以 上~~~

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・・・てな感じですが、ナニカ?

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・・・ということですが、例えば友人の「セスナ172」かなんかでエアロモービルをやってみたい人は、具体的には下記の段取りでやれば合法(のはず)です。

(機長さんに確認する事項)
①この機体は電子デバイスの計器類を使用していますか?
NO・・・であればOK。
(あるいは「AI/DGなどはサクション系/ジャイロの機械式ですか、また高度計、VSI、速度計はピトー管及び静圧動圧により作動する機械式計器ですか?、燃料計やCHT、油温/油圧計等は機械式ないしはセンサー直結ですか?と質問する。「そうですよ」と言われたらOK。
②VFR(有視界飛行)であることを確認。
③PCA(特別管制区)や管制圏(クラスD)、進入管制区、訓練空域、自衛 隊管轄空域、TCA、場外離着陸場の9km圏等の各エリアを抜けて、かつ、VOR、ADF、DMEといった無線航法援助装置を使用せず地文航法(グランドリファレンス)で航行している状態で、どこの管制とも通信設定しておらず、かつ、当面その必要もない状態=無線運用OKになったら合図してください・・・と、機長さんにお願いしておいて、その合図にしたがって無線運用を開始。機長さんが「無線止めて」と言ったらすぐに運用中止して無線機の電源をオフにすること(受信もダメ)。
④念のため離陸前に使用予定のトランシーバ(技術基準適合証明リグ)からテスト送信して、機体搭載の上記「機械式」計器類が誤動作などしないかを確認する。

(・・・もっとも、サクション系/ジャイロによる機械式AI/DGや、ピトー管及び静圧動圧により作動する機械式高度計、VSI、速度計、あるいはガソリンタンク内の「浮き」の位置をそのまま示す燃料計、シリンダーヘッドに固定された温度センサーを温度計に直結したCHT計・・・などを、アマチュア無線機のせいぜい5W程度の送信電力による高周波エネルギーで誤動作させる、って「バビル2世のサイコキネシス」でも一緒に使わないと難しいように思うのは、私だけでしょうか?・・・。)