フライト<修理/整備<製造<設計2023年09月14日 15:10

折損した翼端板(右)。これはもう修理不能と判断して廃棄。
手持ちの程度の良い方(左)を修理。

サテ何をどうするか、作戦を立て、段取りを考えている時間帯のほうがけっこう長い。
手持ちの道具と材料は何があるのか。足らないモノはないか。
オノレの技術はいかほどか。何が出来て、何が出来ないのか。

作業自体はさしたる時間はかからない場合でも、材料&道具の準備や仕込み作業と作業後の片付けまで入れると作業本体と同じくらいの時間がかかる。

スカーフィング 1h。エアサンダー準備して、そこにサンドペーパー貼り付けて、翼端板をテーブルに木ねじで固定して。それから作業開始。裏表、上下。大量の削り粉が飛ぶのでその掃除とかの後始末も手間。

FRP作業、加熱温度管理も。
グラスを巻いてFRP樹脂を浸潤、これを5枚反復 裏表上下。お手々はべとべとになります。それは不可避。 2h 
エポキシとか硬化剤とかを準備して、練り作業。攪拌不十分で硬化せず、という失敗がないように。作業後のローラーとか刷毛とかの洗浄などにも手間がかかる。

硬化確認

FRP切削、整形 2hくらい 下板にネジ止めして固定してから削る、とかの下準備が必要。

FRP切削 粉が大量に出る。

翼端板の上下も同じく バイスに固定して

FRP整形 マスキング

同上、板の上下部分も

パテ入れ作業 3hくらい まずパテに硬化剤を入れて練る作業
専用の練り板の上に載せて。
終わったら練り作業に使った金属板やヘラなどをアセトンで洗浄する作業もあります。

パテ切削整形 大量の削り粉を集めて廃棄処理する作業もあります。

さらにパテ盛り→切削。計5回くらい反復。凸凹が消えるまで。パテに硬化剤入れて、練って、塗りつけて、硬化待ちして。30分くらいで硬化。それから切削。凸凹があればまたパテ練って盛る。そしてまた切削。

凹凸が消えるまでパテ入れパテ切削が終わったら、全体をサンディングして足付け。サフのガン吹き直前の状態。

ウレタン塗料専用のサフェーサー(2液タイプ)をガン吹き。硬化を待って2回吹き付け 準備から片付けまで1hくらい

サフの硬化を待ち、再度作業台に固定してサフの研磨。裏表上下で1hくらい。

捨て白塗装。ガンの準備からガンの洗浄、片付けまでいれると2hくらい
翼端板に長ネジを差し込んで、塗装台に固定する準備作業だけでも0.5hかかる。

いったん全体を真っ白に。さもないと赤が映えない。塗料硬化待ちの合間に草刈りを進めます。捨て白ガン吹きの仕上がり


捨て白の硬化を待って、ブライトレッド(赤)を塗装。4回くらい。2hくらい。

完成

以上、たった一枚の翼端板に対して1日3時間くらいの作業で述べ5日ほど。もちろん他の作業も並行して進めつつ。
 金土日の週末を2回。計15時間を要した。プロがその半分の作業時間で完成したとしても1h=7000円としてプロ任せにすれば修復費用は5万円を超える。

なぜ、DIYで自分でやるのか。
翼端板、たった一枚欠けただけで、もうその機体は飛べない。
そして整備工場は慢性人手不足で、誰もやってはくれない。
・・・と、云うよりM田師匠には恐れ多くてこの程度の作業をお願いするわけには行かないし、超多忙を極める某中堅整備士に頼もうにも「自分でやって下さいっ」のヒトコトで却下されるのがオチである。

人任せにしていては、いつまで経っても何も進まないし、したがって飛べない。

改めて思う。
依存とは、自由を失うことだ。
「それは自分でできる」という自分になることは、自由を手にすることだ。

・良く整備されていて、いつでも飛べる状態のヒコーキを飛ばすのは簡単。
・いつでも飛べるように整備された状態をキープするのはそれより大変
・壊れた部分を修理するのはもっと大変(時間かかる)
・材料を加工してゼロからヒコーキを作るのはさらにタイヘン。
鋼管加工溶接に木工加工接着、被覆、羽布張り塗装、リンケージ 艤装。エンジンも作らにゃならんし。
 無線機とかトラポンとかを作るのもヒジョーにタイヘンだろう。
 でも、どこかで誰かが作り、誰かが調整し、あるいは修理している。見えない、あるいは見ていないだけで。
・一番タイヘンなのはヒコーキの設計。これはムツカシイ。あくまで想像ですが。エンジンはもちろん、無線機とかトラポンとかのアビオニクスの設計も、とんでもなく高度な専門知識を要する。それができる人は本当にわずか。限られている。

フライトのほうは練習開始から30~50時間も練習すればたいていは誰でもソロには出られる。
それに比べると「翼端板たった1枚だけの修理」で15時間ってタイヘンだけど、それでも修理/整備作業は製造や設計に比べれば遙かにラクなんだろう。きっと。だから、フライト<修理/整備<製造<設計

MRJ/スペースジェットの件。
最後のアメリカでの型式認定をクリアできず1兆円がパーになったけれども。とにかく、日本人が設計して、製造して、整備して、調整して、飛んだことは間違いない。その経験をなんとか次世代にリレーできないものか・・・。

タマラン・・・。