「シアワセトハ、ナンダロウ?」2023年12月18日 14:16

12階にある事務所ベランダから夕景を眺めつつ、モノ想いにふける。

ひとたびこの写真の休火山が活動再開すれば、この首都圏は灰燼に帰するというのに、ナントカ巨大ビルとか、都心では大規模再開発事業が引きも切らさず続いている、、、。ご苦労なことだ。

 還暦をとっくに過ぎて、改めてシアワセとは何だろうと、考えたりする。
まず、人によってそれは違う。欲望の充足だという人もいるだろうし、その欲望にもいろいろな段階があるし(マズローの欲望段階説)。

 自分の感覚では、「これからだんだん良くなっていくんじゃないかな?・・・この先もきっと良いことがあるよ」と思える精神状態、であろうか。昭和の時代は多くの人がその感覚を共有していたような気がする。

 例え巨万の富を築いたとしても、あるいは自分の願望を全て充足したとしても、「これから先、そんなに良いことはもう起こらない」という精神状態であるならば、きっとハッピーでない。

 自分の場合、ポンコツが大好きで、それはポンコツというものは手にした瞬間が一番ボロくて、その先、手を入れる毎に段々と良くなっていくワケだから、その過程に悦びというか、シアワセを感じる、ってことは多いにあり得ることと思われる。
 1972年製造のW3然り、同年製造の25B然り・・・。

もうひとつ。「自分にはやるべきことがある」という精神状態も。
これもシアワセ感のひとつの要素ではあるまいか。
完全に弛緩した精神状態ではなくて。
ある種の緊張感を伴うような。

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初冬の風物詩。今期もまたこのシーズンが到来しました。整備陣の皆様、ありがとうございます。シャチョーまでお手伝いいただき恐縮であります。

今や立派な中堅航空整備士に成長して、耐空検査員資格も取得したさんちゃん。

M田さんがエレベータのリンケージ作業をしています。感無量、、、。

耐空検査、テストフライト、各種ストール速度など計測作業も終わり、自分のリハビリもTGL2発で終わってソロに放り出されて。
 思いっきりバンクをかけてみる。半年ぶりだが、ウデはそんなに落ちてない気がする。

ピアノのH岡巨匠を右席に乗せて。ノースポイラーランディングのデモも見せてもらう。この低いパスからさらに2度、3度とかなり深いスリップを連発して高度を下げ、ようやくノースポイラーのパスに乗った。自分にはできねえな。これは。

着陸したら左サイドキャノピーにクラックが発生していた。ここを自分で交換したのはもう10年も昔のこと。
http://diyer-lawyer.asablo.jp/blog/2013/08/22/6954473

経年による老朽化だから仕方ない。今期の運航を終えた来年6月以降に本格修理する予定とし、今回は応急修理に止める。

10年前はこのツールはなかった。リポバッテリ搭載リューター。前回はバカ重い発電機を飛行場に持ち込んで、AC100V仕様のリューターで削ったりしていた。

飛行場にて。野戦病院さながらの応急修理。2時間ほどで完了して、耐空検査員資格を有する中堅航空整備士に確認してもらって、また一人で飛んだ。しかしながら10年前、まだ駆け出しの若造だったその航空整備士に「M田さんはな、キャノピーのアクリル修理、こういうふうにやるんだぜ」って教えたのはワシなのである。

「特大模造カラス」を係留作業に追加。みんな笑うけどね。こっちは必死す。半年かけて自分で整備して、相当高額なる機体保険払って、運搬組立て費用払って、耐空検査費用も払って、係留費も払って。それでもってカラスに羽布破かれて要修理、飛べない・・・てなことになったら目も当てられねえ。どんだけのエネルギーを突っ込んでコレを実現してるんだっ!てコト。

古い馴染みの友人と。元イーグルドライバーの空将補との。現在は某社の雇われ社長兼社有機の操縦教官として激務稼働中、、、。ガンバレー。

↑上のほうのフォトで低高度のスリップを連発してノースポイラーランディングのデモフライトを見せてくれたこのお方、実は元プロのジャズピアニストで夜はピアノを弾いてくれます、、、。
「sero jazz」で検索。
https://www.youtube.com/watch?v=WRJQfITY2b8


クラブの新人航空整備士はかなり重傷の「真空管オタク」で、亡き我が師匠「松つあん」製作の遺品、「2A3ロフティンホワイト純A級モノラルアンプ」をナント3日もかからずレストアしてくれた。松つあんが部品取りにしてしまい、残骸状態だったもの。整流管2本含め電源回りがゴッソリ欠けていたので、ダイオードに置換して全波/半波整流回路に改造し、2A3のヒーター電圧2.5Vは彼の手持ちのジャンクトランスをカット&トライで巻き直して作り、「シャント抵抗両端の電圧は20Vです」「電流計つけてプレート電流50mAでお願いします。」ナドのアドバイスも、、、。

機体のハンガーアウト、組立て、エンジン試運転、各所の寸度舵角測定、その他諸々の耐空検査、テストフライト、ストール速度/諸元の確認計測、自分のリハビリ、ソロフライト復帰、飛行場でのキャノピー応急修理、TABフライトとその録音、トラポンチェック録音・・・などなど、怒涛の2週末6日間が過ぎ去って、、、。ナントカ落ち着いてきたハンガー生活。

ここ5、6年放置していたハンガーのシャッタードア腐れ部分の修復作業にとりかかる。ようやく。このハンガーを建てたのは今を去ること16年前なので、よくぞここまで持ったな、、、の感アリ。

こんな感じの腐れ部分が10カ所くらいも発生している、、、。

ガンガン削る。

相当深くまで腐っている。これじゃネジが効かないワケだ、、、。

腐れ部分をほぼほぼ除去。腐朽菌で腐った部分にはクレオソート防腐剤を注入しておいた。

防腐剤注入木材を2枚、エポキシで貼り合わせて埋め込む工法で、、、。

ドイツ製グライダー補修用高級特殊レジンを使って接着。冬期低温に
つきライティングして加熱、硬化中の温度管理をシッカリと、、、。

一カ所の修理だけでほぼ丸一日かかった。これをあと10カ所ほど修理せねばならない。来春を目途に。ココとか。

ここもヤバイ。

ここも腐りがひどく削ってクレオソート入れたとこ。

木部の腐りで効かなくなったネジを抜去して、鉄板金具にドリルで穴をあけて木ねじ多数打ち込んで応急修理。多忙につき応急修理ばっかりだ、、、。

初冬の凜とした空気感漂う夕暮れの冬木立。

古い、ボロいものが自分の作業を通じて段々と良くなっていく。
自分に、やるべき仕事が多々ある(多すぎるくらいだが、、、。)
これは「シアワセ」と言って良いことなのカモ知れない、、、。
たまらん。

「簡単にできることでオモシロイことなどない」2023年12月31日 18:53

時系列が前後しますが。
25Bハンガーinの6月以降、今期のメイン作業として、10年ぶりのサイドキャノピー交換作業を実施しました(コクピット右側)。

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前回サイドキャノピー交換作業を行ったのはもう一昔、10年も昔のこと。
http://diyer-lawyer.asablo.jp/blog/2013/06/28/6879280
あの夏もひどく暑かった。
そしてハンガー屋根裏の断熱工事は、まだ未施工だった。
結果、ハンガー室温は42℃まで昇温した。

それから10年の歳月が経過して、その間の飛行中の振動とか紫外線、野外係留時の温度変化(夏場35℃から冬場マイナス5℃)etcの要因により、新品だったサイドキャノピーも相当に劣化した。
 トドメは耐空検査フライトのエンジンカット、急降下でVネバーのチョイ手前、ウインドミルでエンジンのリスタート・・・。着陸したら大クラック発生・・・。
 その後しばらくはドイツ製高性能特殊接着剤で修理/補強する弥縫策でしのいでいたが、もうそういうワケにもいかなくなった。

↓こんな感じで、かなり割れてしまった。

まずはエアサンダーで取付けネジ部分10箇所を削って頭を露出させる。

10本の固定ネジの抜去。

ハンガーから搬出して養生/マスキングし、キャノピーアクリルをパキパキ割っては除去していく。

さらにハンマーやらタガネやらエアサンダーやらを使って完全にリムーブ

徹底したリムーブとクリーニング作業。この段階での下地作業が仕上がりに大きく影響する。

塩ビ板で「型」を作る。形状とか固定ネジの位置とか細かく調整

その型にしたがってアクリル板をカットする。専用アクリルカッター使用

こんな感じ。

ここ10年の間、アクリル板は外辺から微細なクラックが発生することを経験値として学んだので、今回は周囲外辺20mmの範囲でアクリル板の裏表両面をFRPで補強した。

FRP硬化の後、ネジ穴開け加工、サラ取りなどの整形作業をしてから慎重に仮固定して様子を見る。

上側を仮固定すると・・・

下側が70mmほど浮く。このまま取り付けると反発力が温存されたまま固定されることになる。それもクラック発生の原因。

データシートに従い加熱して湾曲加工。冷却して形状固定。

さらに下側を固定して、今度は上側をヒーターであぶって湾曲加工。

そのまま板材の冷却を待って湾曲状態を固定する。
これで上下とも素直に無理なく取り付け可能となった。

ネジ穴位置を変えたり・・・状況観察して、よく考えて、臨機応変に、、、。

独国製/2液性キャノピーアクリル専用特殊接着剤を練る。

慎重に接着。この接着剤は硬化が早いので段取りが重要。

パテ入れ/パテ削りを5回ほど繰り返して整形完了。パテ作業だけで丸2日くらいはかかります。と、いうことはほとんど「1週末(金土日)」の朝から晩まで・・・ってことです。

塗装の段階に入ります。今回はイワタのガンを使用、、、、

サフのガン吹きとサフ削り。これも1~2日。いったんマスキング剥がして、状況確認して、またマスキングして。

今回使用したハードナーはこれ。

マスキングを剥がして、仕上がりを見て、またマスキングして・・・

赤の段差修正。その後ライン塗装のマスキング。

捨て白ガン吹き

トップのウレタン塗装ガン吹き

ところが!!!ポカやりました。例えて言うならば「スカートの下からパンツが見えてる」状態。こんなミットモナイ仕上がりをM田師匠に見せるわけにはいかない。さんちゃんにも笑われる。ほとんどの人は気がつかないのでどーでも良いと言えばそうなのだが・・・。

仕方ないのでまた曲線マスキングテープ使って・・・マスキングして。サンディング、足付けして・・・

再塗装。スカートを長くしてパンツを隠します。

その他、胴体の羽布修理、羽布張り、塗装。

ここも同じく羽布の修理再塗装。

プロペラの部分再塗装

仕上がりはこんな感じ。

今回のサイドキャノピー交換作業は、前回ブログの「翼端板修理・再塗装」の3倍くらいの作業量で、6月初旬から7月末まで、ずっとこの作業に充てた。

こんな感じで、亡き師匠の松つあんから付託されたポンコツ号の動態保存活動は、まだまだ続く。なんだかライフワークの様相を呈してきたの感あり。

いろいろな人、価値観、考え方、感じ方があり、それを否定するものではない。しかし自分は「簡単にできることでオモシロイことなどない」という考え方である。

たまらん。

では皆様良いお年を、、、、。