Should Manとの会話2014年09月19日 20:23

右Fフォークのダストブーツが破れ提灯だ。旧車の場合、ガムテ/ビニテ補修では車検は通らない、というネット情報を見つけ、交換することにした。リプロ品を購入済み。

オイルパン下のフレームに木材を当ててジャッキアップ、フロントホイールをはずし右フォークを下に引っこ抜く。

インナーチューブは良い状態だが、チョイチョイと極細コンパウンドで磨くのは、これまで5年近く放置してきたことに対する罪滅ぼし。

W3のノーマルブレーキは怖い。雨が降るとノーブレーキだ。いろいろな人がいろいろな対策をやっているが、こればかりはどうしようもない。
 そんなこともあって10年ほど前、某ショップに特注したグリメカキャリパーのブレーキ周り。しかしチョット気にくわない。ホースが短い、取り回しもイマイチ、ホース自体のグレードもあまり良くなさそう。

その結果、ホースのバンジョー接続部が疲労して外皮にクラックが発生、わずかにフルードが漏れる。12年の経年劣化もあろうが。マイナスドライバーの先の部分。これじゃ車検は通らん。

ここから先がちょっとややこしく、従来ホースのバンジョー部は厚さ10㎜、他方、5年前に購入したままストックしていたデイトナ製ホースは8㎜だ。つうことはチョイ短めのバンジョーボルトが必要。しかも三つ叉側のネジピッチは「男カワサキ」仕様なもんで1.25、グリメカ側は1.0。上下でピッチの異なるボルトが必要だ。どうしたもんかな、と考えつつ工場に遊びに行くと、M田師匠が「柏のライコランド、行ってみれば」。その手があったか。前から行こう行こうと思っていたが、今回、初見参。

親切な店員さんといろいろ協議し、ホース現物も持参して問題なくバンジョーボルト4本をゲット。グリメカ用ではなくブレンボ用ではあるが、ネジ代は8㎜くらいは確保できるのでまあ良かろう。

ホースの取り回しと長さはこんな感じ。長くもなく、短くもなく。サス・ストロークに対してちょうど良い感じ。

トルクレンチはトーニチの「モトトルク」。バイク専用のトルクレンジに特化した、我々バイクいじり御用達の便利なトルクレンチだ。今回のトルクは20Nm。ここは諸説あるもライコランドのベテランとおぼしき整備さんに聞いたところ「ウチはステンのバンジョーボルトは20でやってる」と即答したのでそれで行くことにした。こういうところはメーカー指定などよりも現場の経験がモノを言う。そしてあくまで自己責任である。

ホースが動いたりどこかと擦れたりしないようフェンダー補強板のネジにとも締めして固定した。某工場から有償調達したヒコーキ用のホースクランプ(MS)を使用。秋ちゃんありがとうね。

フルードを充填し、エア抜き。エア抜きは今回、いろいろ試してみた。ワンマンブリーダ(逆止弁付き)とか注射器とか。夭折した後輩の、形見の道具なのである。

写真はエア抜きを手伝ってくれた新進気鋭の航空整備士、さんちゃん。

            「Should Man との会話」

(状況設定)
大学4年、夏の終わり。
自宅前の路上、道路幅2.5m、そこが僕の「工場」。
アスファルトは油だらけ。
スパナやメガネレンチ、ドライバ、スリーボンド1212、プラハン、剥がしたガスケット、交換したボルト&ナット&ワッシャ、取り外した旧ピストン、そのリング、ピストンピンサークリップ、交換したロッカーアームシャフトのOリング、スプレー缶の脱脂洗浄剤、その他おびただしい工具、部品が、地面に敷いた新聞紙の上に散乱している。

僕は、延々、10時間以上、W3のエンジンをバラし、そして組んでいた。
朝4時過ぎ、最後のヘッドボルトをトルクレンチで締め付けた。
うっすらと空の闇が、白みつつある。
そこに浮かび上がるW3のシリンダーヘッド。
アルミの地肌が鈍く輝く。
僕はうっとりとして、W3のエンジンを見つめていた。
その時、Should Manが僕に語りかけてきた。

S・・・Should Man
僕・・・僕
******************************************************
S:W3のピストン交換、腰上OH、綺麗に仕上がったね。
僕:うん、仕上がった。

S:でも、もう、あと半年くらいしか、乗れないね。卒業まで。
僕:そうだな。

S:卒業したら、いよいよ始めるんだね、法律の勉強。
僕:うん、そのつもりだ。

S:バイクは、降りるの?
僕:ああ、降りるよ。

S:W3はどうするの?
僕:車検切れのまま、保管しておく。

S:受かるまで?
僕:ああ。そう決めた。

S:4年間、卒業までまだあと半年あるけど、悔いなく遊んだかい?
僕:ああ、悔いなく遊んだ。

S:楽しかった?
僕:・・・それは、微妙かも知れない。

S:どうして?
僕:君がいつも後ろにいて「悔いなく遊べ」ってメッセージを送るからだよ。

S:いずれモラトリアムが終わることに、気がついていたんだね?。
僕:ああ。いつも、頭の隅っこにある「砂時計」が気になっていた。

S:僕が君に寄り添いはじめた、あの17歳の秋の日から?
僕:そうだ。僕は入院していて、ベッドに寝ながら秋の高い空を見ていた。気づいたら「砂時計」を持った君がいたんだ。

S:それだと、なんだか、遊ぶのも、Shouldみたいだね。
僕:そうだな。いつでもなんでも「べき」だ。

S:これからの浪人生活、やっていく自信ある?
僕:あるよ。

S:おや、大した自信だ。その根拠は?
僕:オレほど4年間、遊び倒した受験生はいないだろうからね。

S:なるほど・・・。
僕:ああ。蓄積されたエネルギー量が違うよ。

S:正負の法則だね。
僕:そのとおりだ。一方に極限まで振れれば、あとは逆に振れるだけ。

S:・・・
僕:・・・

S:もうすぐ、そのモラトリアムが、終わるね。
僕:ああ。終わる。

S:夏も、終わるね。
僕:ああ。夏も終わる。

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