白いTシャツとブルージーンズ Ⅱ ― 2016年02月10日 15:29
朝日新聞 朝刊連載小説 「春に散る」
なんだか展開予想が的中しております。
拳を交わし合って初めて、お互いを理解できる。その相互理解がないと、師弟関係は築けない。つまりストーリイが展開しないのであります。
・・・ということで、街中、ストリートファイトに突入です。
(本日朝刊分)
プロライセンサー、白いTシャツの若者ショーゴ君は、仁さんに向かってケレン味のない左右ストレートを打ちこんで来ました。
しかし仁さん、まだ躊躇しており、これを(ダッキングでなく)スエイバックでディフェンスします。しかしディフェンスだけでコトを収めようというのはもはや難しい状況に。
次の瞬間。
白Tシャツの若者、今度はストレートでなく右フックを振ってきた。
ここで往年の世界ランカー、仁さんの伝家の宝刀、左クロスが炸裂!!!
若者はダウン、アスファルトに頭を打ち付けて倒れた音が・・・
う~~~~~~む。
ここの描写は・・・チョット。
クロス(カウンタ)というのは、ショーゴ君の右フック、右腕の「外側」から仁さんの左腕が重なるようにしてショーゴ君の右顔面に当たる、ということです。二人の腕がクロスします。つまり必然的に左クロスとなります。これは非常に高度なテクニックです。スピードも。
ショーゴ君の右フック打ち始めの一瞬に、仁さんがダッキングしながら左にステップアウトして(つまり相手の右側に出て)そこで、左カウンタをあわせる。そう打たないと「クロス」(ショーゴ君の右フックの外側から打つ)にはなりません。内側から打ったのではクロスにならないのであります。
これに対して相手の右フックをスエイ or ステップバックで避けて、相手の身体が流れたその瞬間に右顔面に左ショート(フックでもストレートでも)を合わせるというのは普通のカウンターであってクロスではない。こんな感じ。井上尚弥選手。天才だ。芸術的。
皆さん尚弥君の強打ばかりを褒めそやしますが、チョット違う。元チャンピオン/ナルバエス選手の右フックを、足の位置もかえず(つまりステップバックせず)、たった10センチ程度スエイしただけで右フックを避けているのがスゴイんです。
まさに紙1枚の見切りだ。スエイしてネジ巻いて、スエイから頭の位置を戻す反動で左フックにつながる。そのスムースさが実に芸術的です。
いずれにせよ次郎さんがサセケンに「見えたか?」というほどの、仁さんの往年の伝家の宝刀、左クロスでした。おミゴトです。
カウンタは自動車事故で言えば出会い頭。相手の動きもスピードに乗っているため破壊力はダブルになります。
法的に言えば「急迫不正の侵害」。違法性阻却事由たる正当防衛の要件を充足します(ここで急に弁護士モード)。
しかも相手もプロ、売られた喧嘩ですから、仁さん、不可罰です。小職が検察官なら、当然に起訴猶予にします。良かったー。
しかしなあ。
元世界ランカーとは言え、リングを離れて40年も経つ老ボクサーからタイミングの良い左クロスをもらっちゃうというのは・・・。そんなんじゃ世界なんて、到底狙えないよっ!!ショーゴ君、ガンバレ!
パトカーのサイレンが鳴り響き、風雲急を告げる展開です。
明日の朝刊が楽しみ。
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